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お茶の缶たちは家庭ごとに、それぞれ広大な庭を持っています。

庭にはさまざまな植物が植えられていて、

缶たちは自分で育てた植物でいろいろなお茶を作りました。

缶の上(彼等の頭の上)にある蓋を空け、

中に育てた植物を入れ混ぜることによりお茶を作ります。

できたお茶は季節の植物で変化しました。



また、お茶を作るときは目的に応じて決まった植物を使いました。

古くからのレシピを使い、植物の効能や性質を良く知る彼等はbicelle b5 gel

子供達にもその伝統を引き継がせ、

小さな学校を作って一人前のお茶の缶になるよう教育していました。

植物の性質とその組み合わせ、そして季節ごとのお茶の役割、

そんなことを学びながら、自分で育てた植物で自分のお茶を作る、

それがお茶の缶の妖精たちの暮らしでした。



アーチーは、去年学校に入りました。

アーチーの兄のケビンは学校では一番、二番を争う優秀な缶です。



今日の授業での、「ラベンダーの蕾とエニシダの朝露に青蜂の蜜を入れる」お茶は、

ケビンの得意なお茶でした。

小さい缶たちのお手本になるように、ケビンはラベンダーの香りの強い太った蕾を選び出し、

エニシダの黄色い輝く花の茂みへ近づいて、丸くておいしそうな朝露を探しました。

それから、青蜂という青みがかったお腹の大きな蜂を学校で飼っているのですが、

その蜂の巣へ行って、蜜を分けてもらいました。

青蜂の蜜は固く結晶になって巣に保存されており、

透き通って水晶の様になっているものが特別上質とされていました。

ラベンダーの蕾に朝露を付けたあと、頭のてっぺんの缶の蓋を開け、

蜂蜜のかけらと一緒に中に入れます。

そして、缶が6分目程になったところで身体を揺すって材料を混ぜます。

暖かいお日様のもとで缶たちが身体を揺すってお茶を作っている様子は

本当に可愛くて楽しいものです。





「そんな蕾ではお茶が苦くなりますよ!!!」

ミス・ピアーの鋭い声で驚いたアーチーは、

蜂の巣の前でエニシダの朝露をこぼしてしまい、

露が蜂に当たって危うく刺されそうになりました。




アーチーは、学校が大嫌いでした。

太った蕾の選び方を習っても、蕾はどれも同じに見えました。

植物は太陽の光を浴びて気怠そうに見え、

強い香りに酔ってアーチーはいつも気分が悪くなりました。

美しくておいしい朝露の見分け方を教えてもらっても、

実際に朝露を見ると、これもまたどれも同じに見えました。



「おいしくて魔法の多い朝露の見分け方、

その1。花びらや葉っぱの、より中心から遠い場所のものを選ぶこと、

その2。太陽の光が差し込んでいること。

その3。粒はできるだけ美しい円を描いていること。」

。。。ミス・ピアーはそういうことを1度しか言ってくれないのです。

いえ、2回はくり返しているかもしれません。

でもアーチーは一つ覚えようとしても2つめ3つめを聞いているうちに

最初のを忘れてしまうのです。

「今言ったでしょう?より中心から遠い露を取ってください、アーチー!

どう見てもそれは真ん中にありますよ!」



「それこの間も習ったよ、君覚えてないの?」

年下のジャックが嬉しそうな顔で言っている、とアーチーは思いました。

そして周りの缶の子供達も半ばあきれ顔でアーチーを見るのでした。



青蜂にいたっては、アーチーはなぜか蜂という蜂に嫌われていて、

一度も美しい結晶をもらえたことはありませんでした。

仕方が無いのでとにかく何でもいいからレシピ通り材料を缶の中に入れて

身体を揺すってお茶を作ると、

いつでも大抵クラスで一番おいしくないお茶ができあがるのでした。

先生たちは、アーチーには一切期待していませんでした。

クラスの生徒たちも、アーチーがいてくれるお陰で皆怒られずにすむと思っていました。