中途で放り出した庭の手入れが気にはなってはいたけれど、気が乗らないのと億劫なのとで寒さを理由に見て見ぬ振りを続けていた。見て見ぬ振りを続ければ気にもならずに見えなくもなるもので、実際ほとんど見えなくなりかかっていたのだけれど、ちゃんと見えている人がいて「今日は暖かいし、庭をなんとかしましょうね」と柔らかい口振りの割りには恐い目で言う。

恐い目は怖いので「あいよ」と答え、散歩から帰って庭を片付けに掛かった。ところが三十分もしないうちにパラパラと雨が降り出した。犬にボールを投げたりして半分は遊んでいたものだから作業はちっとも進んでいないけれど、雨が降り出しては仕方がない。
「雨だよ」
傍で草を食む、じゃなかった草を摘む恐い目を隠し持つ妻に声を掛けた。

「大丈夫、降らないわよ」

降らないわよと言ったって現に降っている。勝手にしろとおもい、ノコとハサミを手にウッドデッキに戻って一服点けて様子を見ていると、雨はすぐに止んでしまって降る気配もない。

ノコとハサミをふたたび手に取り持ち場に戻ると、雨を内心で喜んだのを見透かされたのではというバツの悪いおもいもあってかどうか、足元に寄って来た犬には目も呉れずに庭の片付けに没頭した。